今月の臨床 思春期診療
治療上の問題点
19.思春期診療と漢方療法
村田 高明
1
Takaaki Murata
1
1南多摩病院
pp.1340-1343
発行日 1992年11月10日
Published Date 1992/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901074
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思春期は女性の一生の中では心身ともに急速に発達する時期である。また成熟期に至るまでの最もたいせつな時期でもある。思春期の疾患には,産婦人科の面からみると,月経異常,機能性出血,過多月経,過長月経,月経困難症,外陰腟炎,膀胱炎,卵巣嚢腫,貧血症,拒食症や若年性妊娠などであるが,最近では,STD,心身症的な過敏性腸症候群,起立性調節障害,神経性頻尿や過換気症候群,低体温症,そして若年性成人病や脂肪肝などが多いとの報告がある。これらを大別すると,月経に関わるもの,器質的病変,感染症,血液疾患,胃腸疾患や心身症的なものなどに分けることができる。小児婦人科領域に限ると,いわゆる産婦人科的な治療の対象でしかないが,漢方療法からみると全身的な視野での治療が要求される。
漢方療法が各診療科領域に普及し,小児科でもこれらの分野に,かなり応用されている。思春期では多くの場合,アレルギー性疾患の喘息,花粉症やアトピー性皮膚炎に対して,体質改善の面からのアプローチが行われており,それなりの効果を挙げている。しかし,産婦人科疾患についての訴えは病的であっても,羞恥などから,かなりの異常と自覚しない限り受診しないことが多く,慢性化したり難治例が多い。そのため思春期の漢方療法は,対症療法のみでは十分でない場合が多く,標治法の対症療法とむしろ体質,根本的な治療法である本治法を考慮した治療が必要である。
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