特集 産婦人科への東洋医学的アプローチ
漢方医学からみた女性の一生
村田 高明
1
1東京都国保連合会南多摩病院産婦人科
pp.193-205
発行日 1988年3月25日
Published Date 1988/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207335
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はじめに
昨今,医の心と医の哲学が薄れつつあり,自己管理での養生を実践し,より充足した生活の中で,医療の本来の姿を望むようになってきている。現代西洋医学に疑問を感じ始める人々もふえつつある。そうした人々はその結果,東洋医学に傾倒することが多く,マスコミも率先して東洋医学を取上げるようになってきている。
東洋医学は大別して,北方に発した針灸と南方に発した漢方薬とに大別される。東洋医学の理論は針灸および漢方薬とも古代中国哲学思想に基づいた陰陽五行説の概念である。陰陽五行説というと,どうしても古くて難解であると考えられがちだが,先人の偉業の集積は種々の苦難や歴史の中で陶汰され,継承されてきているのである。古典といわれる『黄帝内経』や『傷寒論』は時代時代での価値観の違いこそあれ,古くて新しいものである。当時としては,特別な情報収集手段もない中で,よく観察し,病態をとらえており,しかも集大成していることに驚嘆せざるを得ない。現在の目で見た場合,すべてを納得することはできないにしても,ある程度は理解し得るし,また応用し得る内容でもある。東洋医学の理論は自然現象の気象変化や植物育成の過程,生態系の循環を体験して得た仮説であるので決して難解ではない。現代医学は生態系に人間が存していることを忘れているが,身体や心の変化を生態系の中でとらえ,仮説である陰陽五行説に当てはめていけば理解しやすい。
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