今月の臨床 思春期診療
治療上の問題点
18.ホルモン療法
林 直樹
1
,
武谷 雄二
1
Naoki Hayashi
1
,
Yuji Taketani
1
1東京大学産婦人科
pp.1338-1339
発行日 1992年11月10日
Published Date 1992/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901073
- 有料閲覧
- 文献概要
思春期は小児期から成熟期への移行期であり,性機能系の発達途上段階に相当する。したがって,その性機能系の中軸たる視床下部・下垂体・卵巣系も未熟であり,この時期には無月経や機能性出血などの月経異常を伴いやすい。その多くは経過観察のみで自然回復を期待して差し支えない。しかし,思春期はさまざまな精神的・肉体的ストレスに起因する視床下部性無月経の頻度は高く,また多嚢胞性卵巣症候群の婦人もこの時期に月経異常を主訴として受診する場合も少なくない。また,まれではあるが器質性病変による中枢性無月経に遭遇することもある。したがって,思春期婦人の月経異常に対して,性機能系の未熟性に起因するものとして経過観察してよいのか,治療を開始すべきなのかの判断は重要である。思春期婦人に対するホルモン療法は,その病態の原因探索と障害部位の診断が前提であることは性成熟婦人に対する場合と同じである。しかし,長期にわたる性ステロイド療法は性機能系の発達過程をかえって抑制する可能性も指摘されており,より慎重な態度が望まれる。また若年であるため,治療に対する理解力も成人に比較して低く,精神的感受性の高い年代であることからコンプレックスを持たないよう病態および治療に関して十分に説明することが要求される。本稿では思春期の代表的な月経異常についてそのホルモン療法の概略と問題点につき概説する。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.