今月の臨床 新しい薬物療法をさぐる
薬物療法プラクティス
12.妊婦マイナートラブルの漢方療法
村田 高明
1
1南多摩病院
pp.48-51
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901574
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妊娠時は母体のみならず,胎児に対しても安全であり,妊娠中の諸症状の治療には慎重でなければならない.そのため,薬害の少ない漢方薬による治療に期待する場合が多くなった.漢方医学の原典の一つである「金匱要略」には妊娠病篇があり,また,「備急千金要方」には妊娠各月の安胎薬と流・早産予防薬の記載がある.このことからも古代より,妊娠中の服薬には細心の注意が払われてきたといえる.各診療領域ではかなりの頻度で,漢方治療が普及している.臨床の実際について,筆者が行った一昨年のアンケート調査(表1)では,妊娠中に行う漢方薬投与は78.7%であった.疾患別では感冒84.6%,妊娠中毒症61.5%,切迫流産46.1%,切迫早産46.1%,妊娠時不定愁訴26.9%,妊娠悪阻23%,妊娠貧血11.5%などの普及率であった.しかし,これらの疾患や症状の治療には,漢方医学の妊娠病の理論を踏まえた漢方薬の投与をしなければ,より効果も挙げられず,また逆効果にもなりかねない.そこで,漢方医学にみる妊娠の病態生理1)の理解を深める目的と,またその応用と治療原則2)について述べる.
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