今月の臨床 帝王切開
帝王切開の実際
26.腹膜外帝王切開術
工藤 隆一
1
,
郷久 鉞二
1
Ryuichi Kudo
1
,
Etsuji satohisa
1
1札幌医科大学産婦人科学講座
pp.712-713
発行日 1992年6月10日
Published Date 1992/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900898
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腹膜外帝王切開術は1961年,当教室の故明石勝英教授がはじめて本術式を行い,わが国へ紹介したとされている1)。この術式はFrankが1907年に恥骨上縁の横切開による開腹を行い,ついで膀胱子宮窩腹膜を切開し,これと腹壁腹膜とを縫合して腹腔を遮断し,子宮頸部を露出し,これに切開を加えて胎児を娩出する法,すなわち経腹膜・腹膜外帝王切開術を創始したのがはじめである。つまり頸部を切開し,胎児を娩出する際に羊水や胎糞や胎垢,あるいは血液が腹腔内に散布されないように配慮したのである。ついで1908年にSelheimは開腹せずに腹膜外に膀胱を子宮頸部より剥離して,子宮頸部を露出して胎児娩出を行った1)。このFrankおよびSelheimの着想を利用して,Latzko3)は1909年膀胱を側方より腹膜外に剥離,Waters4)は1940年に膀胱周囲結合織被膜の前面中央部からT字切開を加え剥離する腹膜外帝王切開術を完成した。
本術式は一般に考えられているように繁雑な方法ではなく,その後改良され簡単な術式になっている2)。著者らは子宮頸癌の根治手術の際に行う腹膜外リンパ節郭清術の腹膜外処理技術の経験ならびに解剖学的所見を基礎として腹膜外帝王切開術の術式の簡易化に努め,両術式をそれぞれ200症例以上施行してきている。
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