特集 帝王切開術
腹膜外帝王切開術
辻 啓
1
,
足利 恭一
1
,
佐藤 省一
1
,
坂田 常穂
1
Akira Tsuji
1
1東京日立病院産婦人科
pp.819-826
発行日 1971年8月10日
Published Date 1971/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204472
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はじめに
従来より腹式帝王切開術の多くは腹膜内帝王切開術で行なわれており,腹膜外帝王切開術は腹腔内感染を誘発する危険があるような場合に,一部の経験ある術者によつてのみ行なわれているに過ぎなかつた。また抗生物質の発達した現在,腹腔内感染防止を目的とした腹膜外帝切の存在価値を認めない医家もいられるが,腹膜内帝切は必然的に腹腔内臓器に侵襲を与えるため,実際には術後の腹腔内癒着など,手術に伴なう後遺症の発生をしばしば見聞する。ゆえにわれわれ臨床医としては,手術の安全実施はもちろんのこと,手術に伴なう合併症や後遺症もできるだけさけねばならないし,また,感染例においては,抗生物質の効果を過信するよりも,感染予防的な術式をまず選ぶべきではなかろうか。
筆者は,かかる意味において近年腹式帝切の適応あるものは,原則として,すべて腹膜外帝切で行なつており,現在までに約200例の腹膜外帝切を行なつてきたが,それらの成績についてはすでに以前報告したごとく2,5,6,7),腹膜を開かずにすむために,患者に与える侵襲や術後経過,および二次的予後などの観点から,腹膜内帝切に比してかなり良好な結果を得ている。
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