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腹膜外帝王切開術は,前期破水などによって感染した羊水が手術時に腹腔内に漏出するのを防止し,膿瘍形成や癒着の発生を防止する上で役立つ術式であるといわれてきた。しかし,この手術法は特別な技術を必要とし,手術時に尿路系を障害する危険があるので,抗生物質が発達した現在においては不必要な術式であるという意見も多い。一方,経腹膜帝王切開術によって重篤な術後感染症が発生し,時には母体死亡をきたすような場合がまれに発生することも報告されており,このような場合には腹膜外帝王切開術が行われていれば,重症な感染は回避できたであろうと述べられている1)。このように,現代における腹膜外帝王切開術に対する評価はまちまちである。
したがって,現在の時点において,腹膜外帝王切開術が術後の感染を防止する上ではたして真に役立つ術式であるか否かを検討することが重要である。Wallace et al.2)はこの点を検索するためにprospectiveな対照実験を行って,腹膜外帝王切開術の有用性について検索した。帝王切開術を必要とする妊婦を腹膜外帝王切囲術・施行群と経腹膜帝王切開術・施行群の2群に分類し,術後の感染症の発生状況について比較した。2群の妊婦はそれぞれ条件がほぼ等しくなるように対応させてある。抗生剤の投与が全く行われなかった場合には,術後の感染症(子宮内膜筋層炎,尿路感染,創部の感染,骨盤静脈炎など)の発生率は,腹膜外帝王切開術群が62%,経腹膜帝王切開術群が56%で,両群の間で差を認めることができなかった。感染症のうらで子宮内膜筋層炎の発生が最も大きいが,その発生率は両群とも56%と同一であった。なお骨盤膿瘍の発生は両群とも認められなかった。
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