Current Research
頸癌の初期発生とHPV感染—子宮頸部のHPV感染と人類の進化
小西 郁生
1
Ikuo Konishi
1
1京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.617-624
発行日 1992年5月10日
Published Date 1992/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900870
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子宮頸癌の発生は疫学的に性交と深く関連していることが知られており,従来より性行為により感染する微生物が頸癌発生の原因ではないかと考えられてきたが,近年の子宮頸癌とhuman papil—lomavirus(HPV)に関する知見が集積されるにつれて,HPVはまず間違いなく大部分の頸癌の発生過程に重要な役割を果していると考えられるに至っている。
性行為による子宮頸部のHPV感染と頸癌の発生を考察する上で,比較動物学的に頸癌の発生をみると,ヒトにおける頸癌の発生頻度に比べ,ヒト以外の哺乳動物における頸癌の発生頻度は極めて稀である。そこで,頸癌発生のリスク因子としての性交を両者についてみると,ヒト以外の哺乳動物では性周期と発情周期が一致し,主に発情期のみに性交を営むのに対して,ヒトでは性周期は存在しているが発情期はなく,性周期と無関係な性交が営まれていることがわかる。ヒトとヒト以外の哺乳動物の頸癌発生頻度の著しい差異は,このような両者の性交形態の差異に基づくものであるのかも知れない。このような比較動物学から得られた示唆が本研究の出発点であった。
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