今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
III 婦人科癌治療
【子宮頸癌】
5.HPVワクチンによる子宮頸癌予防戦略は?
吉川 裕之
1
1筑波大学大学院人間総合科学研究科婦人周産期医学
pp.572-575
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101746
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1 はじめに
性器に感染するヒトパピローマウイルス(human papillomavirus : HPV)は,子宮頸癌の発生に深く関与している.40程度の型が知られる性器HPVのなかで,特定の約15の型(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,69,73,82型など)が,子宮頸癌関連HPV(これをhigh-risk typesともいう)として知られ,最も高頻度に検出されるのはHPV16であり,次いでHPV18である1).子宮頸癌の原因とはならないHPVはlow-risk typesと呼ばれ,尖圭コンジローマや若年性喉頭乳頭種の原因であるHPV6,11型が代表的である.
HPV感染は最も頻度の高い性感染(sexually transmitted infections : STI)で,20歳前後の女性のコホート研究では3~5年で40~60%にHPV感染が起こる2).HPV感染からみると,子宮頸部のHPV感染のうち癌にまで至るものはごく一部であり,むしろ例外的なイベントといえる.HPV癌蛋白であるE6/E7の機能とHPV感染細胞に対する細胞免疫が重要な鍵を握っている.HPV感染は子宮頸癌発生の必要条件であっても十分条件とはいえないが,その感染を予防することで,子宮頸癌発生の制圧が期待できる.
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