今月の臨床 胎児治療—どこまで可能か
疾患と治療
10.胎児仮死はどこまで治療できるか
前田 一雄
1
Kazuo Maeda
1
1聖隷浜松病院産婦人科
pp.290-295
発行日 1992年3月10日
Published Date 1992/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900772
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胎児仮死の治療にはいろいろの方式と,多くの概念がある。一般に胎児仮死の治療とされているのは急速遂娩であって,胎児仮死の所見が胎児心拍数図に出現し,胎児仮死が発生したと認識したら直ちに胎児を娩出させる方法であり,この場合には低酸素症に陥った胎児を早急に母体外に取り出して十分に酸素を含んだ外気を呼吸させ,場合によってはさらに高濃度の酸素を吸入させて,低酸素症から急速に脱出させるのである。
以上の胎児仮死治療は標準的であり,この治療法によって多くの胎児と新生児が低酸素症による死亡の危険から救われ,重症の新生児仮死が著減し,将来の神経性障害のおそれからも大部分解放された。周産期死亡や新生児罹病も減少し,医師は本来の病的新生児に全力を注ぐことを可能とするに至り,問題は早産未熟児の保育のみかと思われた。全例の分娩監視と胎児仮死治療によって新生児仮死は有意に減少し脳性麻痺は著減して,このような対策が周席期管理上重要であることが確かめられた1)。
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