今月の臨床 妊娠と免疫
妊娠維持と免疫
10.絨毛性免疫抑制因子
松崎 昇
1
Noboru Matsuzaki
1
1大阪大学医学部産婦人科
pp.168-171
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900735
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胎児・胎盤(feto-placental unit)は,母方および父方の遺伝子を有し,両方の表現型を発現しているので,母体にとってsemi-alograft(半同種移植片)となっている。母体免疫系細胞群がこれらを認識し,活性化を受け,semi-allograft rejection(移植片拒絶)の誘導がおこると予測されるが,現実には拒絶されずに子宮内で生着・発育をしている。この不思議な現象を説明するために,1953年にMedawarは魅力的な仮説を発表した。その後の現代免疫学の進展に伴い,このsemi-allograftrejectionにはgraft上に表現されているsemi-allo抗原を認識する母体T細胞の関与が重要であることが明らかにされてきた。このようなT細胞を抑制する物質を母児間の接点に存在する絨毛細胞が産生している。本稿では先ず絨毛細胞の産生する免疫抑制物質の特性とそのT細胞抑制機能に言及し,次いでその構成因子の一部であるtransforming growth factor—β(TGF—β)の免疫抑制機能および胎盤内分泌抑制機能について解説したい。
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