Japanese
English
総説
神経成長抑制因子
Growth-Inhibitory Factor
内田 洋子
1
Yoko Uchida
1
1東京都老人総合研究所神経病理
1Department of Neuropathology, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
キーワード:
growth-inhibitory factor
,
Alzheimer's disease
,
reproduction of neurons
,
metallothionein family
,
astrocyte
Keyword:
growth-inhibitory factor
,
Alzheimer's disease
,
reproduction of neurons
,
metallothionein family
,
astrocyte
pp.1114-1120
発行日 1991年12月1日
Published Date 1991/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900279
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1.Alzheimer病では変性と再生が起きている
Alzheimer病は初老期から老年期に起こる原因不明の進行性痴呆で,2つの病理学的特徴がある。1つは大脳皮質や皮質下に老人斑やneurofibrillary tan—gle(NET),curly fiberが出現することで,もう1つは多数のニューロンが変性脱落することである。老人斑は主としてβ蛋白がニューロン外に沈着したもので,NFTとcurly fiberはtau蛋白がニューロン内に蓄積したものである。種々の年齢のDown症の剖検17)や多数例の連続剖検5)の結果から,最初にβ蛋白が沈着してびまん性老人斑を形成し,その後タウ蛋白が沈着してNFTやcurly fiberを形成すること,そして,痴呆と相関するのは老人斑ではなく,NFTやcurly fiberの出現であることが推測されている。NFTやcurly fiberは他の変性疾患(Parkinsonism—dementia complexや進行性核上麻痺など)にも見られるが,その出現部位がニューロンの脱落部位と一致することから,ニューロンはNFTやcurly fiberの形成を経て死に至ると考えられている。さらに,curlyfiberの形態が樹状突起からの再生像を思わせること12)や,NFTやcurly fiberにMAP 5(MAP 5は神経突起の再生に関与する)が含まれること11)から,変性だけではなく,ニューロンの異常な再生も起きていて,NFTやcurly fiberの形成に関与しているという仮説が出されている。
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