今月の臨床 妊娠と免疫
免疫とは
1.現代免疫学の問題点—自己認識
狩野 恭一
1
Kyoichi Kono
1
1バイオメディカルリサーチセンター オリンパス光学工業株式会社
pp.137-141
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900726
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自己免疫疾患と深いかかわり合いをもつ免疫学的自己認識(self-recognition)は,免疫学の創始期すなわち約100年前から,免疫学の中心テーマであり,いわゆる“免疫哲学者”達にとって恰好のスペキュレーションの対象であった。
1901年にP.Ehrlichが自己認識の最初のコンセプトである“Horror autotoxicus”(自家中毒の恐怖)を提出した時,これは天才的思索家の古いコンセプトからのジャンプの一つと解釈され,筆者を含めて現代の免疫学者の多くもそう信じてきた。しかし当時の医学の背景をくわしく調べてみると,Ehrlichのコンセプトは決してその時代の医学の論理的展開からの突出でもジャンプでもなく,当時の医学の流れの中での当然の帰結であり,従って一つの論理的な前進ギヤーを入れたにすぎないことに気付くであろう。
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