今月の臨床 妊娠と免疫
免疫とは
2.細胞性免疫
森 庸厚
1
Tsuneatsu Mori
1
1東京大学付属医科学研究所免疫部門
pp.142-144
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900727
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プロローグ
細胞性免疫に関する体系だった概念はバーネットによって提唱された極めて生物学的な深い洞察にもとづくクローン選択説1)によって確立されたといえよう。その後,遺伝子工学的方法を導入して,B細胞における抗体遺伝子はそのクローニングと発生・分化を経る過程で再構成を受けることによって抗体の多様性が生じることが明らかにされてきた。またT細胞における抗原受容体(TcR)遺伝子も抗体遺伝子と類似の機構でその発現過程を経ることなども近年急速に解明されてきた。さらに主要組織適合抗原(MHC)やアクセサリー分子の遺伝子,分子構造が次々とわかってきた。そして本来の免疫機能である個体における非自己・自己認識を遂行する上でのIg superfamilyと称される一群のおそらくは遺伝子重複(geneduplication)によって生み出された遺伝子群とそれらのコードする免疫担当細胞上に発現された分子群間の相互作用およびこれを円滑に遂行するための局所ホルモンともいえるモノカイン・リンホカインによって免疫応答が進行することなどが次々とわかってきた。本稿では細胞性免疫の中心を担うT細胞について出来るだけup to dateな話題に絞ってまとめ,最後にこのT細胞の活性化機構の起源が卵子に存在しているという驚くべき事実を紹介しておこう。
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