臨床免疫学講座
免疫学的寛容と自己免疫疾患
堀内 篤
1
Atsushi HORIUCHI
1
1近畿大学医学部・第3内科
pp.780-783
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216531
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免疫学的寛容とは
私どもの体は非自己である外来抗原に対して免疫反応を起こすのが普通である.しかし,もしAという抗原が体の中に入った場合,Aに対してのみ特異的に免疫反応がみられず,A以外の抗原に対しては正常の免疫応答を行っていることがある.このような現象が免疫学的寛容immunologic toleranceであり,寛容を誘導する抗原を寛容原tolerogenとよんでいる.免疫学的寛容とまぎらわしい用語がいくつかある.たとえば免疫学的麻痺immunologic paralysisは寛容と同義語として用いられることがあるが,これは多量の抗原を投与したことにより(適量なら強い抗体を産生するが)抗体が産生されなくなってしまった現象を意味する.免疫不全immunodeficiencyは免疫担当細胞に欠陥があるために抗原刺激に反応しなくなった現象であり,先天性にも後天性にも起こりうる.免疫抑制immunosuppressionは免疫不全と同義語であり,不特定の抗原に対する非特異的な免疫不応答状態である.後天性に放射線照射や抗腫瘍剤投与でしばしば経験するが,この場合は一過性のことが多い.
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