今月の臨床 産婦人科内科—治療のポイント
妊娠期
15.妊婦のX線撮影
鈴森 薫
1
Kaoru Suzumori
1
1名古屋市立大学医学部産婦人科
pp.1067-1069
発行日 1991年9月10日
Published Date 1991/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900550
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放射線は,広島,長崎への原爆投下あるいはビキニの水爆実験,近くはチェルノブイリ原子力発電所事故などをみるまでもなく,人間にさまざまな障害を与えるものとして恐れられている。その一方,X線をはじめとして放射線は医学領域で広く利用され,画像診断あるいは治療に不可欠なもので,代替の新技術が開発されない限り,人間と放射線の関わりは今後も深まりこそすれ,なくなるとは考えられない。ところで妊娠中のX線検査は避けるべきであることは知りながら,妊婦が計らずも受けた放射線の障害がどのような形で表れるか,たとえば発育中の胎児に発生異常や発育遅延を引き起こすことはないかといったような直接的な影響の有無は,当事者である妊婦はおろか,担当している産科医にとっても大変な関心事となっている。そして現実には放射線により生ずる障害のみが過大に評価されたり,また医師の告げる意見がまちまちであるために妊婦や家族の判断が惑わされることも稀ではない。
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