今月の臨床 胎児診断—テクニックと評価
胎児からのサンプリング
26.DNA診断
鈴森 薫
1
,
足立 立子
1
Kaoru Suzumori
1
,
Ritsuko Adachi
1
1名古屋市立大学医学部産婦人科
pp.840-843
発行日 1991年7月10日
Published Date 1991/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904957
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
最近,分子生物学上の進歩には目ざましいものがあり,ヒト遺伝子であるDNAの解析が可能になり,遺伝病,遺伝性素因を染色体からさらにDNAレベルにおける変異として捉えることができるようになった。遺伝病の原因の本質は遺伝子DNAの異常であるが,われわれが目で確かめられるのは病気の症状のみである。実際にはDNAの変異→mRNAの異常→作られた蛋白の異常→病気の発現という過程を辿る訳であるが,DNA診断とはこの遺伝子DNA上の変異を目で見える形で捉えて病気の診断をすることである。このDNA診断を応用すれば保因者診断はもとよりのこと,病気の発症前診断や出生前診断も可能である。遺伝子DNAの変異を検出する方法で現在行われている一般的な方法はサザンブロット法であるが,1985年にSaikiらにより発表された特定の遺伝子領域を増幅する方法,PCR(polymerasechain reaction)法が広く臨床応用されつつある。サザンブロット法とPCR法の基本手技については後ほど述べる。
遺伝病のDNA診断法には,1)変異遺伝子そのものを解析し,遺伝子欠失,再編成,1塩基置換などを検出する直接的診断法と,2)変異遺伝子と連鎖する遺伝子マーカーを利用し,目的とする遺伝子内の,あるいはそれに近接したゲノムDNAを制限酵素で切断したときに生ずるDNA多型(RFLPs:restriction fragment length polymorphisms)を利用する間接的診断法がある。表1に現在DNA診断が可能なおもな疾患を示した。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.