今日の産婦人科
羊水細胞培養による胎児染色体検査法について
鈴森 薫
1
Kaoru Suzumori
1
1名古屋市立大学医学部産婦人科学教室
pp.547-552
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204627
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はじめに
最近の細胞培養技術の進歩に伴ない,幾多の未解決の研究課題が,解明されてきた。その中でも,培養技術を導入しての染色体研究は各分野で目覚ましいものがあり,とりわけ,産婦人科領域においては,原因不明として取り扱われていたいくつかの疾病ないし異常が,次々と解明されていつた。たとえば,自然流産の原因に胎児染色体異常が大きな割合を占めていること,また,習慣性流早産患者夫婦の中には染色体異常保因者が存在していること,さらに出生時に認められる奇形児の中には染色体異常によるものが大いに認められることなどが判明して来た。しかしながらこれら異常の原因に染色体が関与していることが判明した現在でも,現に正常児を得たいという希望が切実であるその夫婦,特に染色体異常保因者にとつては,何ら問題の解決にはなつていないのが現状である。
そこでこれを解決する一方法に,胎児染色体の出生前診断法として,羊水中の浮遊胎児細胞を培養して,それを利用して染色体を検索する方法が取られるようになつてきた1)〜7)。しかしながら,その羊水細胞培養の成功率の低いことから今なお,実用の段階に至つていないのが我が国の現況である。今回,著者は従来の方法を参考にした上で,ひとつの新しい成功率の高い方法を編み出したので,その方法と,さらに米国で諸家により広く行なわれている方法とを併わせて記してみることとする。
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