今月の臨床 今日の癌検診
卵巣癌
24.卵巣癌の疫学
宇田川 康博
1
,
塚崎 克己
1
,
野澤 志朗
1
Yasuhiro Udagawa
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.703-706
発行日 1991年6月10日
Published Date 1991/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900458
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卵巣癌は,発生臓器が解剖学的に非直達的位置に存在すること,初期症状に乏しいこと,発生する腫瘍が多種多様で,しかもあらゆる年齢層に亘ることなどの理由から,画像診断や腫瘍マーカーなどの診断技術の飛躍的進歩にもかかわらず早期診断が困難であり,初期癌(Ⅰ期)で発見される頻度はおおよそ25%にすぎない。また,その治療には近年cisplatinを含むregimenが導入され,高い奏効率が得られるようになったものの,必ずしも長期予後の改善には反映されておらず,婦人科悪性腫瘍の中では最も予後不良の疾患とされている。
一方,本邦における卵巣癌の罹患率は,平均寿命の延長や食習慣を始めとする生活様式の欧米化など,社会環境の変遷に伴って年々増加傾向にあり,その発生には環境因子や遺伝因子などの疫学的要因の関与が強く示唆されている。
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