今月の臨床 不育症—その対策のすべて
治療の実際
26.免疫療法
苛原 稔
1
Minoru Irahara
1
1徳島大学医学部産科婦人科学教室
pp.83-85
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900279
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
免疫療法の原理
妊娠は母子間で組織適合抗原(HLA抗原)が異なるため一種の同種移植と考えられ,胎児を母体の拒絶から守る免疫学的妊娠維持機構が存在すると考えられている。免疫学的妊娠維持機構の詳細は未だ不明であるが,ある種の同種抗体(例えばHLA抗原に対する抗体,インターロイキン2レセプターに対する抗体,絨毛表面の抗原に対する抗体など)が母体の免疫能を抑制して,胎児を拒絶より守る働きをしている可能性が示唆されている。この同種抗体は遮断抗体(blocking anti—body)と呼ばれている。
原因不明習慣流産患者の中には,この遮断抗体の産生が何らかの原因で低下している免疫学的習慣流産がある1)。そのような患者に対し,人工操作により妻の血中に遮断抗体を作ること,すなわち抗原として夫(あるいは第3者)のリンパ球を注射することにより,遮断抗体を人工的に産生させ,遮断抗体の産生不全が原因と考えられる免疫学的習慣流産を治療することが免疫療法の原理である。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.