今月の臨床 不妊治療の進歩
男性因子と人工授精
26.精子免疫と不妊
香山 浩二
1
Koji Koyama
1
1兵庫医科大学産婦人科学教室
pp.468-469
発行日 1992年4月10日
Published Date 1992/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900823
- 有料閲覧
- 文献概要
精子免疫による不妊の中には,女性が精子に感作されて抗精子抗体を産生して不妊となる場合と,男性自身が自己の精子抗原に反応して抗精子抗体を産生し,あるいは自己免疫性精巣炎を起こして不妊となる場合がある。本来精子は血液—精巣関門Blood-testis barrierによって循環系から隔離されており,精子先抗原が免疫系をこ暴露されることはないが,何かの原因でこのbarrierが破綻し,精子抗原が露出すると自己免疫応答が誘導されてくる。臨床的にも精巣での炎症や損傷,精路通過障害あるいは精管結紮患者に高率に抗精子抗体の検出されることが報告されている。
従来,不妊患者に抗精子抗体が検出された場合にも,それに対する適切な治療法がなかったため,患者に抗精子抗体の検査を受けなさいという説得性に乏しかったが,最近,体外受精—胚移植(IVF-ET)の応用により抗体保有患者も妊娠が可能となって,従来挙児の望めなかった夫婦にとっても希望が持てるようになってきた。現在,精子免疫による不妊の治療法として表1に示すような方法が試みられているが,以下それぞれの治療法について簡単に説明を加える。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.