薬の臨床
婦人科手術術後の肝機能異常の予防に対するアデラビン9号の臨床的検討
苛原 稔
1
,
山野 修司
1
,
平野 浩紀
1
,
名護 可容
1
,
横山 裕司
1
,
青野 敏博
1
Minoru Irahara
1
1徳島大学医学部産科婦人科学教室
pp.1033-1038
発行日 1990年11月10日
Published Date 1990/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900195
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術後肝機能障害予防に対するアデラビン9号の有用性を,比較的長時間の婦人科手術例を対象に検討した。対象は子宮癌などで開腹手術を施行した96例であり,内訳は,術後にアデラビン9号を投与したアデラビン群45例および対照群51例であった。アデラビン9号の投与は,原則として手術当日より7日間,1回1アンブルずつ1日2回点滴静注した。両群を比較検討すると,背景因子には差がなかったが,肝トランスアミナーゼ測定値の術後経過では,GOT,GPTともにアデラビン群で有意に低く推移した。さらに各時期別,疾患別,術式別,手術時間別,輸血の有無別,麻酔剤別のGOT,GPTの異常値発生率の検討では,いずれにおいてもアデラビン群が少ない傾向が認められた。特に各時期別の成績の比較では手術7日後で有意(p<0.05)にアデラビン群で異常値発生率が低く,また輸血無の場合にもやはり有意(p<0.05)にアデラビン群が低かった。さらに,アデラビン群ではGOTあるいはGPTが100IU/lを越える異常高値例が1例もなく,対照群では約10%認められたことから,術後肝機能障害予防に対するアデラビン9号の有効性が認められた。一方,アデラビン9号の投与による副作用症状は認められず,アデラビン9号は安全性の上で問題ないと考えられた。以上の成績より,アデラビン9号は婦人科領域の術後肝機能障害予防薬として極めて有用であることが再確認された。
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