今月の臨床 不育症—その対策のすべて
原疾患との関わり
4.黄体機能不全と不育症
山下 三郎
1
Saburo Yamashita
1
1社会保険徳山中央病院産婦人科
pp.20-22
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900257
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
黄体機能不全は不妊症例の3〜4%にみられるとされているのみならず,妊娠例においても初期流産の頻度が高く,不育症の重要な位置を占めるものと考えられている。不育症の原因は多岐にわたっており,その大部分は妊卵異常あるいは遺伝的因子などによるものであるが,黄体機能不全によるものも約35%は存在するとされている。
不育症は一般に習慣性流産としてあらわれることが多いが,習慣性流産における黄体機能不全の発症率35%は不妊症全体における黄体機能不全の頻度3.5%よりはるかに多い。表1は1981年から10年間の当院での習慣性流産の原因をまとめたもので,全症例140例中黄体機能不全は子宮因子に次いで多く,検査し得た50例中20例(40%)に陽性であった。最近,early pregnancy factorや低単位HCG測定キットの応用によりごく早期の流産が判明するようになったが,これらoccult Pregnancyと呼ばれるcaseも含めると,実際には,受精卵の30〜50%が流産すると報告されており,今後,黄体機能不全との関わりにおいてもさらに検討される余地があると思われる。また,黄体機能不全は薬物療法によって比較的容易に治療が可能であり,その意味でわれわれ臨床家にとって重要な分野と言える。本稿では,黄体機能不全が,どのようなメカニズムで不育症と関連するのかについて解説し,次いで黄体機能不全症に対する治療方針について言及する。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.