臨床研修セミナー 手術手技
III.卵巣・卵管手術
マイクロサージェリーによる卵管形成術
長川 尚夫
1
,
山田 祐士
1
,
石川 久直
1
,
佐藤 和雄
1
Hisao Osada
1
1日本大学医学部産科婦人科学教室
pp.595-605
発行日 1990年7月10日
Published Date 1990/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900128
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管腔臓器である卵管は,その機能も複雑で精子や卵の輸送ばかりでなく,卵管粘液内における受精や受精卵の培地として妊娠の成立に重要な役割を担っている。ここに一旦機能的,器質的異常が発生すると子宮外妊娠を招いたり妊孕性の低下による卵管性不妊症へと移行する。
この卵管を取巻く生殖医学の進歩は著しく,なかでも1978年のSteptoe,Edwardsに始まった体外受精による胚移植法は,卵管性不妊の画期的な治療法として確立されつつある。またこの卵管性不妊症のもう一つの治療法に自然妊娠を目的としたマイクロサージェリーによる卵管形成術がある。このどちらを選択するかは,施設によって多少考え方も違うが,いずれも子宝に恵まれない夫婦にとっては光明といえる1)。一方診断面での進歩も超音波断層診断や腹腔鏡,子宮鏡といった新しい検査手段の応用によって子宮,卵管を取巻く器質性不妊症の診断率が著しく向上したといえる2)。このように卵管性不妊の診断治療には,著しい変革が見られることから卵管に行う手術にも新たな考え方が生じている3)。
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