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遭遇しやすい典型ケース
32歳の特にリスクを認めない39週の初産婦が子宮口全開大後,自然破水をした.その後胎児心拍数陣痛図(CTG)で突然の徐脈を認めた.意識は清明,橈骨動脈を触知して血圧の著しい低下がなく,CTGの心音と母体脈拍が異なることを確認した.酸素を投与し,腹部の触診を行ったが異常な硬さは感じなかった.左側臥位にして内診したが,臍帯は触知しなかった.児頭は小泉門先進,矢状縫合縦径に一致,先進部は+4であったことから,鉗子分娩で児を娩出した.出生体重3,046g,アプガースコア4/7,臍帯動脈ガス分析 : pH 7.09であった.新生児蘇生の初期措置を行っていると,助産師より性器出血が多いと声がかかり,交代して双手圧迫を行いながら人員を集めた.さらにルートを確保してオキシトシン,エルゴメトリンを投与したが,双手圧迫を解除すると出血する状態が持続した.出血に凝血塊を認めず臨床現場即時検査(POCT)でフィブリノゲン82mg/dLであったことから「産科危機的出血」宣言を行い,フィブリノゲン製剤3g,赤血球製剤(RBC)6単位,新鮮凍結血漿(FFP)6単位を同型ノンクロスでオーダーした.検査室よりフィブリノゲン78mg/dL,FDP 238μg/mL,アンチトロンビン(AT)92%,Hb 8.4g/dLであると連絡があった.最終的にRBC 12単位(RBC-LR-2 : 6パック),FFP 12単位(FFP-LR120 : 6パック,FFP-LR240 : 3パック),フィブリノゲン製剤6gを投与し,出血量3,560gで止血が得られた.後日,亜鉛コプロポルフィリン<1.6 pmol/mL,シアリルTn抗原(STN)65.0U/mLと報告があった.
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