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はじめに
1960年前後に,米国のEdward Hon(1958),ウルグアイのRoberto Caldeyro-Barcia(1966),ドイツのKonrad Hammacher(1967)がそれぞれ独自に,瞬時胎児心拍数を経時的に表す方法,胎児心拍数陣痛図(cardiotocogram : CTG)を開発した.
CTGが開発された1960年前後は,出生した児の脳性麻痺や精神発達遅滞は,分娩時の仮死が主な原因であると考えられていた.1970年代に入るとCTGを用いて,分娩時に早期の異常を発見し,介入することで新生児仮死を防ぎ,脳性麻痺や精神発達遅滞が減少すると考えられるようになった1).しかし,分娩時のCTG群と間欠的聴診群での前方視的ランダム化比較試験の結果,新生児の短期予後や脳性麻痺の頻度は変わらず,CTGによって過剰に胎児の状態悪化が診断され,帝王切開術や吸引・鉗子分娩の頻度が増加することが示された2〜4).現在では,脳性麻痺の発生率は出生1,000対2前後と報告されており,さらにそのなかで分娩時の低酸素による脳性麻痺は10〜20%程度と少ない.分娩時の低酸素によるアスフィキシアを予防するためにCTGをフルに活用しても,脳性麻痺の発生率が変化しないのは,当然の結果なのかもしれない.
これらの結果にもかかわらず,CTGが広く浸透しているのは,胎児well-being評価としてのCTGモニタリングの偽陰性率が非常に低い5)という特徴が,異常分娩を作らないようにするという現場の医師の感覚にマッチしているためと思われる.
分娩管理において,CTGパターンの正確な判読と適切な対応は重要である.CTGパターンとその対応・管理については,米国産婦人科学会をはじめ,英国産婦人科学会,カナダ産婦人科学会では,3段階分類が採用されている.一方で,2007年にParerとIkedaは5段階分類を提唱6)し,日本ではこの5段階分類が採用された.国外では,5段階分類は有用性に対するエビデンスが少なく,複雑という理由から採用されなかったが,2008年以降では,5段階分類が3段階分類と比べ,胎児アシドーシスのリスク評価に有用であり,検者間での一致率が高いという報告が出てきている7〜9).
CTGは正確な判読が求められるが,以前から,検者間の一致率や同一検者でも時間をおいた判定の再現性が乏しいことが問題点として指摘されている.この問題を解決するために,コンピューター自動解析装置による判読が試みられている.
国外のコンピューター自動解析装置としては,北米のPeriCALMTM,英国のINFANT®,オランダのIntelliSpace Perinatal®,ポルトガルのOmniview-SisPorto®が挙げられ,それぞれ,産婦人科医師との一致率や有用性などについて検討した報告がみられる10〜13).
日本では,Japan GE healthcareがTrium社と提携し,Implementation of the Alert Systemを5段階分類で解析し,レベル分類に応じて,グラフィックの色調を変化させ,視覚的にレベルを通知するTriumシステム(Trium)を開発した.今回,TriumによるCTG解析の精度を,産婦人科医師の判読と比較し,一致度を確認するための検討を行った.
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