巻頭言
コンピューターに学ぶ
吉村 正藏
1
1東京慈恵会医科大学第一内科学教室
pp.1003
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201962
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医学,医療へのコンピューター導入の問題は,これまで幾度か論ぜられているが,医学におけるコンピューターは今や論議,研究の段階を過ぎ,実用化の時代を迎えつつある。この推進力となったのは,いわゆるME研究家であり,MEという境界領域の輝かしい成果の一つであろう。
コンピューターの例に見られるように,新しい工学的成果の医学への応用は,ME研究の常道とも言える一つの研究方向である。しかし境界領域研究の木質は一領域での新しい成果の他領域への応用のみではなかろう。例えば,筆者らの心音トランスデューサーの研究も10年を越え,また他の研究者による成果も数多く現われたが,これらの研究の多くは工学畑ではすでにあたりまえの手法を,胸壁振動の解析に地道に適用したにすぎない。境界領域研究の本質は,一方の領域の知識なり手法なりを,他領域に適用して未知なものの解明に役立たせることにあって,適用される知識,手法の古い,新しいとは別問題であろう。
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