症例
心内進展静脈内平滑筋腫症の不完全切除例に対して静脈結紮により術後腫瘍塞栓症を予防した1例
樋野 貴宏
1
,
原口 広史
1
,
井上 双葉
1
,
松尾 光徳
1
,
廣田 泰
1
,
原田 美由紀
1
,
甲賀 かをり
1
,
平池 修
1
,
大須賀 穣
1
,
藤井 知行
1
1東京大学医学部附属病院女性外科
pp.961-967
発行日 2020年9月10日
Published Date 2020/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409210149
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▶要旨
異所性に発生する平滑筋腫のなかに静脈内平滑筋腫(IVL)がある.心臓内まで進展する場合,時に致死的な経過を辿る.今回,複数の静脈からIVLが進展し右心室内に至った症例を経験したので報告する.
症例は44歳,臍上に及ぶ子宮筋腫に対し手術を勧められ,当科を受診した.術前検査で右卵巣静脈から右心室まで到達する血管内病変を認め,心臓外科・血管外科・泌尿器科と合同で完全切除術の方針(不完全切除の場合は中枢側血管を結紮もしくは離断)とした.IVLは,右卵巣静脈から下大静脈,右心室・左右総腸骨静脈系まで達し,右子宮静脈と左卵巣静脈からの進展も認めた.単純子宮全摘術・両側付属器切除術,静脈内腫瘍摘出術を施行したが,一部の筋腫は血管壁に癒着し摘出困難であったため,中枢側の静脈を結紮し,塞栓症の発症を予防した.
IVLの手術では,病変を術前に把握することが重要だが,予測しえないこともあり,入念な事前準備と他科との連携がより重要となる.
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