症例
微小な卵巣奇形腫に対し腹腔鏡下手術を行った後に寛解に至った抗NMDA受容体脳炎の1例
糸井 瑞恵
1
,
平敷 好一郎
1
,
春成 淳平
1
,
大塚 聡代
1
,
片山 恵里
1
,
藤田 久子
1
,
新井 未央
1
,
河原井 麗正
1
,
井上 泰
2
,
木村 博昭
1
1君津中央病院 産婦人科
2君津中央病院 病理部
pp.715-720
発行日 2018年7月10日
Published Date 2018/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409209450
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▶要約
抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎は,神経細胞のNMDA受容体に対する自己抗体による自己免疫性脳炎である.症例は40歳.急性発症の精神錯乱にて近医精神科に入院.ステロイドパルス療法,抗ウイルス薬治療を行うが入院13日目に強直性痙攣を生じ,当院神経内科に搬送となった.経過から抗NMDA受容体脳炎の可能性を考慮し当科紹介となった.左卵巣に1cmの奇形腫が疑われ手術の方針となったが,術前検査で深部静脈血栓症,肺塞栓症を認めたため,血栓症治療後に腹腔鏡下左付属器切除を施行した.髄液検査にて抗NMDA受容体抗体陽性であり,診断確定となった.微小な卵巣奇形腫でも脳炎の原因となりうることから,病変の検索には慎重を期す必要がある.また,臥床状態に加えステロイド治療が行われることが多く,血栓症のリスクは高い.術前の血栓スクリーニングとともに,手術に際しては低侵襲な腹腔鏡下手術が望ましいと考える.
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