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抗NMDA受容体脳炎とは
抗NMDA受容体脳炎は,グルタミン酸受容体の一つであるN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体に対する抗体を有する卵巣奇形腫に随伴する傍腫瘍性脳炎として,2007年1月,ペンシルバニア大学のDalmauらにより提唱された自己免疫性脳炎である1).
典型例では,発熱,頭痛,倦怠感などの非特異的感冒症状出現後,1週間程度で不安,抑うつあるいは幻覚,妄想などの著明な精神症状が出現する1~3).精神症状が極期に至る頃,痙攣様発作を生じ,それを契機に無反応状態に至る.自発開眼しているが発語はなく,外的刺激にも反応は乏しい.カタレプシーを伴い緊張病性混迷類似の状態に至る.その後,嚥下障害,唾液分泌亢進,中枢性低換気が加わり自発呼吸は減弱し人工呼吸器管理となる.その頃から口・顔面を中心とするジスキニジアが出現し,四肢筋トーヌスは亢進する.開眼,開口,挺舌運動,四肢の周期的運動,舞踏病様運動,アテトーゼ,ジストニア,ミオクローヌスなど多彩な不随意運動が数カ月~1年持続する2).意識障害にもかかわらず不随意運動が持続するのが本疾患の特徴である.不随意運動は,体温上昇,頻脈,徐脈,発汗亢進,唾液分泌亢進など多彩な自律神経症状を伴う3).痙攣様発作も頻発するが発作波を認めないことが多く,抗てんかん薬も一般に無効である.不随意運動は難治性であり,抑制するためプロポフォールやミダゾラムなどを長期間使用せざるを得ない2).この時期に,深部静脈血栓症,肺梗塞,敗血症を併発し死に至る症例もある.しかし,全身合併症を管理し,この時期を乗りきることができれば,たとえ脳が萎縮したとしても数年以上かけて緩徐に回復し得ることが報告されている2,4).
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