今月の臨床 婦人科悪性腫瘍規約改訂のポイントと対応─「何が」「なぜ」「どのように」変わったのか
卵巣腫瘍
卵巣漿液性癌の新しい概念
京 哲
1
,
中山 健太郎
1
1島根大学医学部産科婦人科
pp.732-740
発行日 2016年8月10日
Published Date 2016/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208838
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●卵巣癌は,その発癌分子機構の違いによる新たな分類法が提唱された.特に漿液性癌では卵管采上皮細胞を起源として卵管上皮内癌(STIC)を通じて発生する高異型漿液性癌と,卵巣の封入体囊胞を通じて発生する低異型漿液性癌に分けられる.
●高異型漿液性癌はp53遺伝子異常をベースに遺伝子不安定性を背景としてaggressiveなgrowthを示し,予後不良である.
●低異型漿液性癌はKRAS,PTEN,PIK3CAなどにわずかな遺伝子変異が少しずつ集積し,precursorである境界悪性病変(SBT/APST)を通じて段階的に発生するもので,発育は緩徐で予後良好である.
●封入体囊胞も卵管采細胞の自然移植によって形成される説が提唱されていおり,低異型漿液性癌やそのprecursorである境界悪性病変までもが卵管采細胞を起源とする可能性がある.
●両側卵管切除術を行うことで,将来の卵巣癌の発生頻度が約60〜70%減少することが明らかとなり,両側卵管切除術が卵巣癌発生予防策として定着してゆくであろう.
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