症例
高血圧合併慢性腎炎患者の1妊娠症例—少量アスピリン療法の試み
山崎 一郎
1,2
,
高桑 好一
1
,
長谷川 功
1
,
立川 千恵子
2
,
吉沢 浩志
2
,
佐藤 芳昭
2
,
金沢 浩二
2
,
竹内 正七
2
,
追手 巍
2
,
清水 不二雄
2
,
斎藤 隆生
3
,
成田 一衛
3
,
吉田 和清
3
,
荒川 正昭
3
Ichiro Yamazaki
1,2
,
Takao Saito
3
1新潟大学医学部産婦人科学教室
2新潟大学腎臓研究施設免疫病態学部門
3新潟大学医学部第二内科
pp.1003-1006
発行日 1989年10月10日
Published Date 1989/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208096
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高血圧を合併した慢性腎炎患者(Ccr 50-70 ml/min)の高年初産例を経験したので報告した。妊娠中毒症発症の確率が高いと予測され,その発症予防の試みとして降圧剤とともにaspirinを妊娠15週から服用させた。血中のthromboxane B2/6—keto-PGFlα比の変動を観察したところ,aspirin服用前の2.42から服用後2週で2.07,服用後10週には0.83と6—keto-PGFlαが優位となった。母体は妊娠中毒症になり妊娠33週に胎児仮死のため帝王切開術を施行したが,分娩後腎炎の著しい増悪もなかった。胎児はAFDの下限で奇形もなく,胎盤の病理所見もほぼ正常だった。
以上より,aspirin投与が,血小板由来のthromboxane A 2産生を血管由来のprostacyclin産生に比べ有意に抑制することにより,胎盤での梗塞とそれに起因するIUGRを予防した可能性が考えられた。
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