特集 腫瘍マーカー
癌・トロホブラスト抗原
山下 幸紀
1
,
萬 豊
2
,
牟礼 一秀
2
,
林 博章
2
,
前田 康子
2
,
中村 隆文
2
,
井上 亮一
2
,
清水 哲也
2
Kohki Yamashita
1
,
Yutaka Yorozu
2
1国立札幌病院産婦人科
2旭川医科大学産婦人科学教室
pp.47-50
発行日 1988年1月10日
Published Date 1988/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207717
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ある種の臓器は,癌化することにより,"新たに"胎生期の臓器に"のみ"認められる物質を,細胞表面に発現あるいは分泌するようになることが知られており,これらを癌・胎児抗原といっているが,癌・トロホブラスト抗原もこの範疇に入るもので,癌に特異的に,あるいは癌に関連して発現される抗原のうち,正常トロホブラストにも共通して認められるものをいう。以前から,癌・胎児抗原という命名に対し,これらのほとんどすべてのものが癌および胎児臓器に完全に特異的に発現されている訳ではないため,すなわち,非癌あるいは正常臓器においても種々のレベルで認められることが多いため,その命名が適当でないとの主張があり,これらの抗原は,むしろ細胞の分化に関連して出現してくるものであることから,分化抗原(differentiation antigen)というべきとの意見もある1)。癌・トロホブラスト抗原についても同様の観点,あるいはレベルから,その命名について必ずしも意見の一致をみるとは限らないが,この点についての詳細な言及は避けて,本稿では従来から慣用的に用いられてきた,この癌・トロホブラスト抗原という名称を,そのまま比較的広義に解釈して用いて話を進めていく。
既にCEAあるいはα-fetoproteinなどの癌・胎児抗原については多くの系統的な検索がなされているが,癌・トロホブラスト抗原については,現在までのところいくつかの断片的な成績しかえられていない。本稿では,癌・トロホブラスト抗原としての概念をもって報告されているもののいくつかを紹介するとともに,モノクローナル抗体を用いて検討した我々の成績についても述べてみる。
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