講座 実地医家のための不妊症治療講座・8
不育と免疫
高桑 好一
1
,
竹内 正七
1
Koichi Takakuwa
1
,
Shoshichi Takeuchi
1
1新潟大学医学部産婦人科学教室
pp.544-547
発行日 1987年8月10日
Published Date 1987/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207639
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流産ないしは死産を反復するいわゆる不育症の原因としては従来より種々のものが考えられており,子宮因子,遺伝学的因子,内分泌学的因子,内科学的因子などが挙げられる。これに対し近年,妊孕現象の免疫学的解析が進み,不育症の病態に免疫が関与していることを示唆する報告が見られる。そして最近の研究により,これらの不育症には免疫学的妊娠維持機構の破綻によると考えられる場合と,自己免疫状態が関与していると考えられる場合とがあることが示唆されている。前者は妊娠初期における流産のみを反復する場合であり,後者は妊娠中期以降の流産ないしは死産および初期流産を反復する場合が該当することが多い。このような病態に対し米国のFaulkらは前者をprimary habitual abortion原発性習慣性流産,後者をsecondary habitual abortion続発性習慣性流産と呼ぶことを提唱している1)。またこのような不育症に対する有効な治療法はこれまでないに等しかったが,その病態の解明が進むとともに新しい治療法が試みられ有効性が報告されている。
本稿においては妊孕現象の免疫学的維持機構に関する最近の知見を述べるとともに,上述のような免疫が関与すると考えられている不育症に関する知見を当科における成績ならびに各種文献をもとに考察することとする。
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