今月の臨床 妊娠と免疫
病態にかかわる免疫異常
1.流産・不育と免疫異常 1)母体免疫応答異常
青木 耕治
1
1名古屋市立城西病院産婦人科
pp.1037-1041
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100854
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はじめに
以前より“hybrid vigor”(雑種の生殖優位性)という概念や,また近年では“placental immunotrophism”(妊娠維持への免疫学的支持効果)という概念が支持されているように,「母体の子宮脱落膜内免疫担当細胞がバランスよく胎芽抗原を認識することが,妊娠の維持に有利に働く」ことが証明されてきた1).1995年,妊娠前のナチュラルキラー(NK)細胞活性が高い反復流産患者は,通常レベルの患者に比べて,その後に流産の危険率が約3倍高くなることを筆者らは明らかにした2).その後,米国の複数の研究機関が同様な研究結果を報告している.よって,ある不育症患者では脱落膜内免疫細胞の胎芽抗原への認識が不適当のため,NK細胞依存性の流産が一機序として起こっていると考えられる.
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