今月の臨床 妊娠と免疫
病態にかかわる免疫異常
1.流産・不育と免疫異常 3)習慣流産の診断と治療
高桑 好一
1
,
夏目 学浩
1
,
高木 偉博
1
,
三井 卓弥
1
,
石井 桂介
1
,
安達 博
1
,
田村 正毅
1
,
田中 憲一
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科(産婦人科)
pp.1047-1051
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100856
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はじめに
胎児(あるいは胎児・胎盤系)は,母体にとって半同種移植片であると同時に,自己組織としての一面も持つ.
前者の側面を考慮した場合,妊娠に伴いさまざまな免疫反応が生ずることが指摘され,一方,それらの異常が流産の発症に関与することが近年明らかとなっている.すなわち,半同種移植片としての胎児・胎盤系を免疫的に維持しようとするメカニズムの破綻が流産に関与し,このような病態に対しては,夫リンパ球を接種するいわゆる「免疫療法」が行われている.一方,過剰な自己組織を体内に抱えることにより,あるいは素因として,本来発現しないはずの自己抗体が産生され,これが流産(あるいは死産)に関与する可能性があり,これに対しては,免疫抑制療法,抗凝固療法などが行われている.
妊孕現象の免疫的維持機構および流産との関連性,自己免疫異常と不育症との関連性については,本特集の別項で解説が行われており,本稿においては,それらに対する治療の実際について解説することとする.
なお,習慣流産とは3回以上の自然流産を反復する病態を示す用語であり,いわゆる「免疫療法」については習慣流産を対象としているが,自己免疫異常の治療については,反復流・死産症例(妊娠22週以降も含む)を対象にしていることをお断りしておく.
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