図解 初心者のための手術理論 機能保存手術
子宮筋腫
塚本 直樹
1
1九州大学産婦人科
pp.273-277
発行日 1987年4月10日
Published Date 1987/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207576
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.手術法の理論的背景
子宮筋腫は産婦人科の日常の診療でしばしば遭遇する疾患で,剖検によると30歳以上の女性の約20%に種々の大きさの筋腫がみられるといわれている1)。しかし,これは良性の腫瘍であり,臨床上何らかの症状をきたし治療の対象となるのはその一部にすぎない。子宮筋腫は一般には性成熟期婦人の疾患ということができ,19歳以下ではまれで,40歳代に最も多く診断され,続いて30歳代,50歳代の順となっている2)。したがって,臨床症状を訴えて手術の適応となる場合には,患者は既に結婚して子供も何人かおり,子宮の摘出術が行われることが多い。子宮筋腫に対する保存的手術である筋腫摘出術(Myomectomy)の対象となるのは,妊孕性を温存し,または妊孕能を増加させる必要がある婦人が対象となる。
筋腫摘出術は,1840年にフランスParisのAmussatが腟式に行ったのが最初といわれている3)。1844年には米国LancasterのAtleeが腹式に筋腫摘出術を行い,1898年には英国LiverpoolのAlexanderが1つの子宮より25の筋腫を摘出したと報告している。しかし,筋腫摘出術は子宮摘出術に比べて,手術が困難であり,術中の出血が多く,また術後の出血,感染,イレウスなどの頻度が高く,手術死亡例も稀ではなかったことから,しばらくは省みられなかった。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.