ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 妊娠中毒症
内科からみた妊娠中毒症とその管理
安東 明夫
1
,
三上 裕司
1
,
岡田 倫之
1
,
折田 義正
1
Akio Ando
1
1大阪大学医学部第一内科
pp.865-873
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207279
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妊娠の経過中に母体の生理機能の上に生じる負荷の増加は極めて大きく,内分泌腺の変化を基礎とした妊娠徴候はもちろん,腎を含めた循環器系,消化器系,脳・神経系など多方面にわたって認められる。これらの妊娠性の変化は,妊娠の維持および分娩にそなえて必要なものであるが,時に異常反応が出現し,病的症状を呈するに至る。このような状態が妊娠中毒症であると解される。
既知のごとく,日本産科婦人科学会の妊娠中毒症問題委員会では,妊娠中毒症の定義,症型分類,軽症・重症の判定基準などについて委員会提案を行った1)。従来の日本妊娠中毒症分類2)では,高血圧,蛋白尿,浮腫の3症状を同等に評価し,OG分類同様多くの疾患を含んでいた。しかし,新提案では妊娠偶発合併症の除外と〔注〕により国際的統一への余地を残している。内科医より見ても,ICD分類のように妊娠中毒症は妊娠中に惹起された高血圧と割り切るには異論があり,むしろ,FIGO分類・米国分類3),PIHなどのような高血圧を主軸とし,これに蛋白尿や浮腫を伴った疾患群として捉える分類に親しみがあった。また,今回の新提案より妊娠中毒症とくに純粋妊娠中毒症を診断するには,いわゆる除外診断となり,多くの妊娠検査の駆使を余儀なくされる可能性がある。しかし,妊娠中毒症の多くの病因から考えた場合,新提案の中に残されたあいまいさの中にこそ本質があるのかもしれない。
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