ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 妊娠中毒症
妊娠中毒症の母体管理—日産婦栄養代謝委員会の勧告を中心に
関場 香
1
,
江口 勝人
1
Kaoru Sekiba
1
,
Katsuto Eguchi
1
1岡山大学医学部産科婦人科教室
pp.853-857
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207276
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妊娠中毒症の本態は陽炎のようなものであり,従来から「学説の疾患」と呼ばれているほどである。最近,世界情勢および母子保健上の重要性から日産婦妊娠中毒症問題委員会でその定義,新しい分類法,診断法が再検討され,さらに妊娠中毒症研究会においてもその病態論や成因論をめぐって活発な議論が交されており,ごくわずかではあるが妊娠中毒症の本態が少しずつ明らかになりつつあることは大変喜ばしいことである。
一般に,妊娠中毒症の治療は上記のごとき事情から,臨床における試行結果の蓄積から得られたものが先行しており,empiricalなものがほとんどであることはやむを得ない。妊娠中毒症の治療は腎疾患治療に類似しているけれども,次の2つの点が最大の相違点である。すなわち,当然のことながら妊娠中毒症では母体のみならず胎児も含めて治療すること,次いで対症的治療法のひとつである薬物療法は一部を除いて胎児への影響が十分解明されていないため考慮の必要性があり,また症例によっては対症療法ゆえに病勢の誤認を招くこともある。従来から,妊娠中毒症の治療は安静療法,食事療法および薬物療法が主体であるが,薬害という観点から特に食事療法による栄養管理の重要性が強調されるようになったわけである。妊婦の栄養状態と妊娠中毒症発症の間には密接な因果関係があることが認められており,現在のところ食事療法は妊娠中毒症に対する基本治療のひとつで,臨床上大変重要である。
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