ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 子宮頸癌
子宮頸癌放射線療法のあり方
平林 光司
1
Koji Hirabayashi
1
1国立福山病院産婦人科
pp.315-319
発行日 1985年5月10日
Published Date 1985/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207170
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我国全体としての頸癌治療成績を向上させる上で最も大切なことは既に提言されている標準方式1)を早急にとり入れることである。我国における頸癌の治療成績は昭和28年の子宮癌委員会発足以来着実に改善されている2)。その要因を分析してみると,端的にいって手術療法においては,早期癌比率の上昇がその主因と考えられ,一方放射線治療では照射機器の進歩,TAO式腔内照射用器の普及などのtechnical factorの改善がその主因と考えられる。また我国の頸癌治療成績率が国際的に,トップの座を保っている主因は手術療法の好成績と,その広い手術適応にあることは明らかであり,放射線治療の成績はなお一歩の感がある3)。このような背景をふまえて,まず手術と放射という二大治療法の特質,標準方式についての補足,実質生存率という考え方,私の群別化基準とその根拠,について述べ,個々の問題として,術後照射,頸部腺癌の治療などについて述べたい。
手術療法と放射線療法の本質的差について,これを端的に図に示した4)。手術療法の治療域は狭い。しかし,その中にすべての癌が含まれれば100%の治癒率が得られる反面,少しでも洩れれば0%の治癒率となる。そしてこの治療域を少しでも拡げようとすると障害は急速に重篤化する反面,治癒率の上昇は微々たるものである。種々な拡大術式での成績がこれを裏づけている。
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