指標
乳腺発育の内分泌的調節
武谷 雄二
1
,
水野 正彦
1
Yuji Taketani
1
,
Masahiko Mizuno
1
1東京大学医学部産科婦人科教室
pp.145-152
発行日 1985年3月10日
Published Date 1985/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207133
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ヒトを含む哺乳動物の特徴の1つである母乳哺育は,一連の生殖過程の最終段階であり,種族保存に重要な意義を有している。ヒトにおいてこそ人工栄養法の開発により,母乳分泌の良否は児の死活問題にまではならないが,近年,栄養学的,免疫学的あるいは母子関係の早期確立といったさまざまな立場から母乳の利点が強調され,母乳が哺育上理想的なものであることは衆目の一致するところである。
妊娠中の乳腺の発育の調節は,母乳の恩恵に浴すべき胎児由来,またはそれの附属物である胎盤由来のホルモンが,直接的または,母体内分泌環境を変化させることにより行われる。分娩を契機として乳腺はその本来の営みである乳汁分泌現象が一気に開花するが,これも児の娩出という現象により誘起され,一旦発来した乳汁分泌は児の吸引刺激により維持される。以上の如く乳腺は母児間の巧妙な合目的的な相互作用により,その固有の機能を発現するのである。
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