特集 胎盤
胎盤の内分泌調節
岩下 光利
1,2
,
安達 知子
1,2
,
渡辺 正子
1,2
,
武田 佳彦
1,2
,
坂元 正一
1,2
Mitsutoshi Iwashita
1,2
1東京女子医科大学母子総合医療センター
2東京女子医科大学産婦人科
pp.1063-1069
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208106
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胎盤は胎児と母体間のガス交換や物質輸送にあずかるだけでなく,内分泌臓器としても大きな役割を担っているのは周知の事実である。estradiolやprogesteroneのようなステロイドホルモンやhuman chorionic gonado—tropin (hCG),human placental lactogen (hPL)のような蛋白ホルモンは胎盤から分泌されるホルモンとしてなじみ深いが,胎盤はそのほかにも多種多様なホルモンを産生・分泌しており,その多様性は驚くばかりである。一方,胎盤には各種ホルモンのレセプターも存在し,このことは胎盤が単にホルモンの分泌臓器であるだけでなくホルモンの標的臓器でもあることを物語っている。これらのホルモンのレセプターの中には胎盤自身が分泌するホルモンに対するレセプターも存在し,そのことは胎盤自身にautocrine/paracrine systemによる内分泌制御機構が存在することを示唆するものである。しかし,胎盤で産生される多くのホルモンの生理学的意義はいまだに不明であり,その調節機構に至っては推測の域を出ない。また,限られたスペースで胎盤で産生されるホルモンのすべてを論じるのは困難であるため,本稿では胎盤の内分泌学的調節機構について,比較的あきらかとなっているもののみについて紹介し,筆者らの成績と合わせて概説したい。
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