明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 胎児--その自立と依存
Topics
胎児発育とタウリン
森山 郁子
1
Ikuko Moriyama
1
1奈良県立医科大学産婦人科教室
pp.930-933
発行日 1984年12月10日
Published Date 1984/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207098
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分子内に硫黄原子をもつtaurineは哺乳動物組織の高含有成分であり,心筋,骨格筋,脳,網膜等の組織中および胆汁,血清,母乳中に高濃度に存在している。taurineのもつ生理的機能の1つとして胆汁酸合成は明らかにされた役割の1つである1,2)。またtaurineは心筋,神経などの興奮細胞の膜安定化作用やイオン流入の調整作用を有することが明らかにされつつある3,4)。生体内でのtaurine濃度の変化やその輸送能力の変化は多くの病的状態と密接な関係にあることが明らかであり,それらの中にはてんかん5),ataxia6),遺伝性心筋症7),うっ血性心不全8)などが含まれている。またtaurineが多様な薬理作用を有することも明らかであり,抗不整脈作用9,10),抗てんかん作用11)などが,そのよく知られた作用である。
われわれは,周産期におけるtaurineの動態から,胎児・新生児発育の必須栄養素として評価してきている。それは在胎週数の短い胎児ほどtaurineの血中濃度が高く,生後には低下すること,一方母乳中に最も豊富に含有するなどの成績12,13)による。さらにtaurineが胎盤内に高濃度に存在する成績から,taurineの胎盤移送と,濃縮機序を微絨毛膜小胞(brush border)のレベルで解析し14),胎児発育との関連を検討してきている。
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