明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 胎児--その自立と依存
胎児内分泌機能—自立と母体依存性
矢内原 巧
1
Takumi Yanaihara
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.923-929
発行日 1984年12月10日
Published Date 1984/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207097
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胎児は胎盤を介しその生命維持に必要なすべてを母体に依存しているが,その分化発育の過程で個としての生命を確立するために独立性を獲得してゆくと考えられる。胎児の内分泌機能は個体として生きて行くためには必要不可欠な要素であり,またその機能は多岐にわたっている。甲状腺機能や糖代謝は胎児の発育に重要な意義をもち,胎児自身で制御機構をもつと同時に胎盤を介した母体の影響下にあることも糖尿病合併妊娠における巨大児の発生等から明らかであろう。母児間に介在する胎盤は原則的にその分子量の大小によって物質の母児移行を拡散現象にもとづいて行っているが,一方barrierとして選択的輸送能も有しており,胎盤自体の分泌するホルモンや代謝能とも関連し,母体・胎盤・胎児系の内分泌環境を一層複雑なものにしている。
本稿では胎児の内分泌機能のうち,胎盤および母体の関与が最も大きいと考えられるステロイドホルモン産生に焦点をあて,母児相関の面から胎児の自立性と母体依存性について考えてみたい。
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