明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 生殖免疫
Topics
血液型不適合妊娠についての最近の進歩
浮田 昌彦
1
Masahiko Ukita
1
1倉敷中央病院産婦人科
pp.653-656
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207040
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I.妊産婦のType & Screen
妊産婦の赤血球不規則抗体の頻度は一般供血者の5〜10倍に達するといわれている。欧米ではほぼroutineになっている妊産婦のtype & screenも,ようやくわが国の一部の施設で行われるようになってきた。浮田ら(1983)1)は7926例の妊産婦の中147例1(1.86%)に不規則抗体を認め,このうら溶血性輸血副作用の原因となりうるもの113例(76.9%),IgG抗体の中新生児溶血性疾患(hemolylic disease of the newborn;HDN)の原因となる可能性のあるもの36例(24.5%)と報告している。白人と比較するとD陽性妊婦の不規則抗体の頻度はほぼ同じであり,D陰性妊婦の抗D抗体の頻度も変わらないが,D陰性が日本人の約30倍である白人では抗D抗体の絶対数が多いので,全体として白人の不規則抗体検出率が高くなる。白人では抗D抗体,抗c抗体,抗K抗体が多いが,日本人では抗E抗体の頻度が抗D抗体より高く,抗K抗体はほとんどみられないのが特徴である。輸血歴を有する妊婦では不規則抗体の頻度が高く(2.51%),しかも高い抗体価を示すものがある。将来妊娠の可能性がある女性にはE不適合輸血をさけることがのぞましい。
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