明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 生殖免疫
産婦人科医に必要な生殖免疫の知識
竹内 正七
1
,
丸橋 敏宏
1
Shoshichi Takeuchi
1
,
Toshihiro Maruhashi
1
1新潟大学医学部産科婦人科学教室
pp.621-627
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207034
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本稿「産婦人科医に必要な生殖免疫の知識」を述べるにあたり,免疫学の立場から産科婦人科学を考えてみたい。生体が自己の構成成分と異なる構造物(not self)を認識し,生体防禦作用を起こすことは,かなり古くから免疫学の常識とされてきた。しかし,not selfである癌の生体内での増殖,父系の組織適合性抗原系MHC,major histocampatibility complexを持つ胎芽・胎児の生着・増殖を考えるとき,一般の免疫学理論では説明が不可能である。そこで癌免疫学・生殖免疫学という独自の免疫学が発達してきた。癌免疫においてはその抗原がいまだ不確実であり,その免疫機構を解明することは前途多難であるといわざるを得ない。しかし,生殖免疫においては,父系MHCおよび癌・胎児抗原という明確な抗原が存在しており,癌免疫より解明が容易であろうと思われる。妊孕現象を免疫学の立場からとらえ,そのmechanismを解明することは,癌の生体内での増殖のmechanismの解明に重要な示唆を与えると期待される。このような意味において,われわれ産婦人科医は極めて有利な立場にあるとともに,重大な任務をおびているといえるであろう。本稿ではいままでの幾多の報告に基づき,妊孕現象の免疫学的把握およびそれに伴う疾患の免疫学的背景について述べてみたい。
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