明日への展開 ADVANCED TECHNOLOGY
V.治療技術
新生児薬物療法の管理
伊藤 進
1
,
大西 鐘壽
1
Susumu Itoh
1
,
Shoju Onishi
1
1香川医科大学小児科学教室
pp.385-388
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206991
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新生児期における体液中の薬物濃度管理の重要性は,過去において医原病がこの時期に集中的に発生している事実からも明白である。その原因として,①薬物代謝に関与する酵素系が経時的に発達すること,②薬物代謝の個体差が大であること,③胎児期は経胎盤的に,授乳期は母乳を介して児へ薬物が移行し母体よりの影響を受けること,の3点が挙げられる。したがって的確な投与が極めて困難であり,そのため薬物の蓄積が生じ易い。さらに胎児新生児肝の代謝の特性すなわちphase Iの代表的酵素であるcytochrome P−450が既に成人肝の約1/3の活性が認められるにもかかわらず,phase IIのUDP-glu—curonytransferase活性は成人肝の1%以下である点から明らかなように毒性のある中間代謝産物の生じ易い状態にあることも特徴として挙げられる。したがって新生児期における体液中薬物濃度測定は,年長児や成人と異なり,微量の試料で迅速な測定法が必要である。我々は,新生児医療の場に高速液体クロマトグラフィーを導入し臨床に役立てているのでその経験を踏まえて新生児薬物管理について概説したい。
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