Modern Therapy 合併症の母体と新生児リスク
母体への薬物療法と新生児への影響
山本 皓一
1,2
Koichi Yamamoto
1,2
1東京警察病院産婦人科
2東京大学医学部産婦人科
pp.187-193
発行日 1981年3月10日
Published Date 1981/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206402
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妊娠中に使用した薬物が胎児に及ぼす影響は,妊娠時期によってその様相が著しく異なる。妊娠初期の器官形成期では胎芽や胎児の死亡や先天奇形などが主な胎児障害となるが,妊娠中期以降では各臓器の成長とその機能成熟が主体となるため,薬物の影響も発育や機能に対する障害となって現れることが多い。
これらの胎児障害の中で最も恐れられるのは先天奇形であり,多くの場合,異常の程度や範囲が一目瞭然であるためもあって,妊・産婦自身はもちろん,当事者たちの関心は非常に高い。これらの人たちが妊娠初期での薬物使用にきわめて慎重になっている現状は,この関心の程度をよく反映していると言ってよい。これに対して,妊娠中期以降の薬物使用に関しては医師も妊・産婦も,少なくとも妊娠初期程には注意を払わないことが多い。この時期の胎児への副作用は,たとえ出ても軽度で一過性の機能異常に止まるという認識があるためであろう。しかし,薬の種類や用量によっては,胎児や出生後の新生児に重篤な機能障害を起こし,その後遺症が永久的に残ったり,時には児の死亡をきたすこともある。このことに産婦人科医はもっと注意を払う必要がある。
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