明日への展開 ADVANCED TECHNOLOGY
III.腫瘍
絨毛癌の解析と予防的管理確立への新しいアプローチ
望月 真人
1
,
丸尾 猛
1
Matsuto Mochizuki
1
,
Takeshi Maruo
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.294-301
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206976
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
絨毛癌は妊卵トロホブラストを母地として発生する腫瘍であり,速かに肺,脳に血行性転移を起こし,約半数が死の転帰をとる極めて悪性の疾患である。
細胞遺伝学的には相同染色体の両方もしくは少なくとも一方が配偶者に由来するという特異な遺伝子構成を示し,内分泌学的には糖蛋白ホルモンである絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の分泌過多,単純蛋白ホルモンである胎盤ラクトーゲン(hPL)の分泌過少という特異なパターンを示す。さらに最近では,トロホブラストの悪性化に伴い生化学的に分泌糖蛋白であるhCGの糖鎖に質的変化の起こることが明らかにされている。つまり,絨毛癌は一部の例外を除けばすべて妊娠に由来して発生し,その腫瘍の消長がhCGの量的ならびに質的変化から連続的に追跡しうるという特徴を有する。したがって,ここに絨毛癌の発生過程解明と予防的管理確立の可能性が見出される。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.