産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅰ.婦人科篇
自己免疫疾患
金沢 浩二
1
,
吉沢 浩志
1
,
竹内 正七
1
Koji Kanazawa
1
1新潟大学医学部産科婦人科学教室
pp.819-824
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206902
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生体の恒常性homeostasis維持において異物排除という免疫学的理論は不動である。異物とは非自己not-selfであり,生体はこれに対して細胞性,体液性免疫応答をし,最終的にその拒絶排除に成功する。一方,自己self,すなわち生体を構成してその機能を担当している成分に対しては免疫応答をしないのが原則とされてきた。しかし,現実には自己に対する免疫応答も発現しうることが解明されてきた。そして,もし自己に対する免疫応答が発現し,それが質的に,あるいは量的に生理的範囲を逸脱し,その結果として組織障害をきたし,臨床的症候を呈した場合,その病態を自己免疫疾患autoimmune diseaseと呼称している。
従来原因不明とされていた疾患には少なからずこの自己免疫疾患に分類するべきもののあることが明らかにされ,現在では表1のような疾患があげられている。これら疾患には女性に好発するものがあり,また,早発閉経と抗卵巣抗体,女性不妊と抗卵抗体など婦人科領域に特有な病態もある。しかし,自己免疫疾患が特に興味をもってとりあげられるのは産科領域においてであり,後述するように,それは妊孕現象が自己免疫疾患の発生機序に関する研究に極めて有意義な情報を提供してきたからである。
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